睡眠時無呼吸症候群を疑う時。
諸般の事情があり、睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)に関して少しづつ記載していこうと思います。
最初は、「睡眠時無呼吸症候群を疑う時」です。
International Classification of sleep disorders, 3rd Edition(ICD-3) では、
①AHI(無呼吸/低呼吸指数)が5以上で日中の過度な眠気などの症状がある時。
②症状に関わらずAHIが15以上。
③高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳梗塞、糖尿病もしくは認知機能障害、気分障害があり、AHI5以上。
であればOSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)と診断出来るとしてます。
かなり広範囲の病態をOSASとしている印象です。
では、どの様な症状があれば、OSASを疑うのでしょうか。前述のICD-3で示されている症状は、日中の眠気、不眠、倦怠感、いびき、自覚する夜間の睡眠障害もしくは他覚的な無呼吸とされています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群を疑う症状を下記に示します。
最も有名なOSASのスクリーニングのための問診表としてESS( The Epworth Sleepiness Scale)があります。
日中の症状に注目して、ESS11点以上を優位としています。
ESSの有効性を調べた日本の研究があり、そこではESS11点以上またはBMI25以上でOSASに対する感度72%、特異度70%とスクリーニングには適さない結果でした。(耳 鼻 臨 床 98:10;809~814, 2005)
他にも研究があり、概ね同様の結果でした。2003 年 2 月に起きた JR 運転
士による居眠り運転の原因がOSASであった事から、その後多くの事業所でESSを用いたスクリーニングが行われました。しかし、同年10月に別のOSASを原因とした居眠りの事故では事前にESSが行われたものの病的な眠気とは判断されていなかったとの事です。ESSでは自覚症状に注目されており、自覚の無いOSAS患者や解雇や配置転換を恐れて質問票に虚偽記載をした事例もあったとの事です。(日職災誌,66:1-10,2018)
他にもSTOPP-BANGテスト、ベルリン質問紙などがあります。
ベルリン質問紙ではAHI≧5をOSASとした場合、感度0.75、特異度0.45とESS同様あまり有用なスクリーニング法とは言えません。
STOP-Bangテストは 2008 年に北米の術前患者を対象とした検討から考案された OSAS の簡易鑑別法です。
STOP-Bang テスト値 3 点以上を陽性とした場合,中等症―重症 SAS を検出する感度は 95.7%,特異度は 42.9%と報告した研究があります。(日本プライマリ・ケア連合学会誌 2019, vol. 42, no. 1, p. 26-31)
STOPP-BANGでは比較的感度は高いものの特異度は低く、スクリーニングには比較的有用かもしれません。
ただ、睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020でも「質問紙の診断精度は低く、偽陰性が起こる可能性があり、患者にとって有害になる可能性がある」とされれており質問紙のみでのスクリーニングには限界があると思われます。
実践的な方法としては、質問紙でのスクリーニングは参考にして、上記の様なOSASを疑う症状や難治性の高血圧や冠動脈疾患、DMなどのOSASと関わる疾患がある時は簡易モニターを行う事なのだと思われます。
簡易モニターやPSGなどでの精査は次回以降で述べさせて頂こうと思います。
初回の投稿は以上にしようと思います。
至らぬ点あるかと思いますが、初めての投稿という事でご容赦下さい。