奈良の呼吸器内科医ブログ(仮)

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obstructive sleep apnea in adults (N Engj Med 2019;380:1442-9)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群のNEJMに掲載されていた総説です。

抜粋しての意訳です。 

途中で息切れしたので出来た範囲で、、、

 

key clinical points 

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は頻度が高く、交通事故や心血管疾患の独立したrisk factorである。

・家庭での睡眠時無呼吸検査(簡易検査)は、補助的には有用ではあるが、それだけではOSASを除外する事は出来ない。

脳梗塞や低換気症候群、慢性心不全、もしくはオピオイド使用中の患者に関しては、PSG(終夜睡眠ポリグラフィー検査)が勧められる。

CPAPは有症状性や中等症~重症の睡眠時無呼吸患者に考慮されるべきである。

CPAPを拒否するもしくは使用が困難な患者に対する、スリープスプリント(マウスピース)や手術療法などの代替手段に関しては、閉塞の性質や患者要因、好みなどを元に考慮されるべきである。

 

58歳女性、主訴:倦怠感と不眠。 

7~8時間の睡眠に関わらず、爽快感なく起床している。彼女は夫からあえぎ呼吸を指摘されていた。彼女は排尿のため起き、通常はすぐに眠れる。最近、職場からの帰りに運転している時に眠気を感じていた。肥満症、高血圧、2型糖尿病既往あり。BMI35、巨舌があり軟口蓋を閉塞する所見があった。どの様にこの患者を評価して治療すべきか? 

 

 

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は周期的な上気道閉塞に特徴づけられ、換気の減少や停止を起こし、低酸素や高炭酸ガス血症、呼吸停止を生じる。

多くの患者は自信の睡眠障害に気がつかず、医療機関に受診しない。 

 

疾患頻度(推測):

30~49歳 男性:10%、女性:3% 

50~70歳 男性:17%、女性:9% 

アメリカでは2400万人が未診断であると予測されている。 

 

Risk factor

・肥満 

最も重要なリスク因子。BMI30以上であれば、40%以上の患者でOSASが指摘されていた。

・男性

機序は不明。プロゲステロンが上気道の筋肉を刺激するので換気が保たれるので妊娠可能な女性より高齢女性の方が無呼吸が多いや、アンドロゲンが舌の筋肉量を上げて閉塞性無呼吸を悪化させるなど言われている。

甲状腺機能低下症

・末端肥大症

 

評価

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は不眠を訴えるすべての患者に考慮すべきである。table1にある症状はSASの可能性を上げる。

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重要な事は、すべてのOSAS患者で不眠やあえぎを訴える訳では無い事である。

BMI値が高くなれば、OSASの頻度が増えるが、適正体重でもOSAS患者は存在しうる。

 

 

 

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診断

OSASはPSG(終夜睡眠ポリグラフィー検査)で診断されていた。夜間の無呼吸もしくは低呼吸指数をsleep laboratory(日本では無呼吸症候群を診療する病院での入院下)で 計測する。

閉塞性無呼吸は呼吸努力に反して、ほぼ完全な流速の途絶(>90%)が睡眠中に10秒以上生じる事で、低呼吸は30%以上の流速低下が少なくとも3%以上の血中酸素濃度の低下か覚醒反応と一般的には定義される。

 

AHI(無呼吸、低呼吸指数)が1時間に5回以上で閉塞性無呼吸と定義される。

軽症: AHI 5~15 

中等症:AHI 16~30 

重症: AHI 30以上 

 

AHIは体重、寝る体位、年齢、飲酒、薬剤、体液バランスなどで変化する。なのでAHIは計測する時間や夜間の内でも変化する。

それ故、疾患重症度や長期間のリスク評価のために、1晩の睡眠中に測定したAHIで評価する事に限界がある。

閉塞性無呼吸を診断する必要性が増えた事と検査コストを減らす目的で、自宅で行う簡易な診断ツールが開発され検討されてきた。

 

最もよく使用されている家庭での無呼吸検査(home sleep apnea test)は、睡眠時間の計測が出来ない。ゆえにAHI(無呼吸/低呼吸指数)を計測する事が出来ない。

その変わりこれらの機械ではREI(respiratory-event index)を計測する。REIはすべての無呼吸もしくは4%酸素濃度が低下する呼吸イベントの頻度を覚醒反応を除いた時間で計測する。

これらの試験はしばしば、閉塞性無呼吸の重症度を過小評価してしまう。

(訳注:AHIの分母は睡眠時間であるが、REIの分母は測定時間なので、睡眠時間<測定時間になる事が多く、同じ低呼吸・無呼吸イベント数であってもREIでは分母が大きくなり過小評価されてしまう。なので、REI<5でもOSASを除外する事は出来ない。ちなみにPSGでは脳波測定などで睡眠時間を計測可能。)

 

共存症 

未診断の閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者では健常者よりも3倍自動車事故を起こしやすいと言われる。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、心血管疾患のリスク増加と関係する。

 6000人(>40歳)以上のコホートで上位1/4以上のAHIを有する患者は、下位1/4に比べて、高血圧、脳梗塞、冠動脈疾患、心不全BMIや他の心血管リスクで調整しても高かった。 

 

AHI30以上では、睡眠関連の不整脈の頻度が多かった。

AHI20以上は、男性では4倍、女性では2倍の脳梗塞リスクとなる。

20年と観察期間の長い研究で、OSASは糖尿病の独立したリスクにもなる。同様の研究でAHI30以上の40~70歳男性では、癌による死亡率やすべての原因による死亡率を上昇させる事が示された。

 

OSASの治療 

最も効果的な治療は、睡眠中に上気道を開存させるためのCPAP療法である。

CPAPは吸気時も呼気時も一定の圧を上気道にかける。

AHIが15以上もしくは5~14であっても症状を伴う場合や心不全、高血圧、脳梗塞、冠動脈疾患などを有する場合は、CPAPでの治療が推奨される。

CPAPの適切な使用を4時間以上を70%以上の夜間に使用する事と定義した場合に、CPAPアドヒアランス保持率は75%程度と報告されていたが、実際にはもっと低いと思われる。陽圧換気の調整には様々な方法があり、吸気はより高い圧で設定して、呼気には低い圧にするや、呼吸毎の流速に応じて自動調整したり、呼気の最初に低圧にしたりする方法があるが、何れの方法もアドヒアランスを向上するに至っていない。

 

軽症のOSAS患者やCPAPを拒否した、もしくは維持不可能な患者に関しては下顎を前進させるための口腔内装置が候補になる。他に寝る体位の調整や咽頭の手術加療も選択肢になる。

あるRCTでは、口腔内装置よりもCPAPの方がAHIを減少させるのにより効果的であっtが、アドヒアランス率は口腔内装置の方が高かった。

口腔内装置は、CPAPが使用出来ない軽症~中等症のOSAS患者に推奨されているが、長期間の使用は、かみ合わせを変えてしまう。

 

生活習慣の是正

体重減少はすべてのOSASを持つ肥満患者に推奨される。体重減少とCPAPインスリン感受性や血中脂質をCPAP単独に比べて改善する事がRCTで示されている。

10kg以上の体重減少は軽症のOSAS患者50%以上を改善させる。