地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

TAPOs (Transient Asymptomatic Pulmonary Opacities)

知らなかった概念であり勉強しました。

Osimertinib最適使用ガイドラインでは間質性肺炎の発症率は6.8%と言われています。

下記に示す論文では間質性肺炎(ILD)の発症率は1~3%とされています。

ただ、ILDではなくTKI治療中に一時的に陰影が生じる現象があり、TAPOs (Transient Asymptomatic Pulmonary Opacities) と言われてみていです。

 

無症状で、限局的で、一時的に陰影が出て消失する事が特徴との事です。

韓国の研究で74人のT790M陽性肺腺癌でTKIでの1次治療に失敗して、2次治療としてOsimertinibを使用した患者が対象です。

その中で15人(20.3%)にTAPOSが見つかったとの事で、それなりに頻度であるみたいです。

TAPOsが生じるまでの中央値は24週(1~72週)で、TAPOSが持続する期間の中央値は6週間(5~24週)。

 

TAPOsの典型的なパターンはOPパターンとの事です。

TAPOsの画像パターン別の結果は、

COP(cryptogenic organizing pneumonia)  11例 (50%)

SEP(simple eosinophilic pneumonia) 10例 (45%)

nodular  1例 (4.5%)

mixed (COP+SEP)  4例 (26.7%)

 

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さらに、優位差は無かったもののTAPOsがあった方が治療効果が良好であったというのです。

 

TAPOsあり。PFS:22ヶ月

TAPOsなし。PFS:15ヶ月 (P=0.293) 

 

TAPOsあり。OS:37ヶ月

TAPOsなし。OS:24ヶ月 (P=0.059)

 

症例数が少ないので鵜呑みには出来ないかもしれませんね。

TKI使用中に軽微の陰影が生じたとしても、すぐに肺障害と考えずにTAPOsを考慮して無症状ならば、慎重に経過観察しながら、TKIを継続しても良いかもしれません。

 


Journal of Thoracic Oncology Vol. 13 No. 8: 1106-1112