奈良の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

がん関連高カルシウム血症

肺癌診療でもしばしば、がん関連の高Ca血症は経験します。

最近NEJMに総説(N Engl J Med 2022;386:1443-51.)が出たので、要点を抜粋します。

 

key points

-  様々ながんの経過で、がんの因子が正常なカルシウム及び骨代謝を圧倒することで高Ca血症を合併する。

-  がん関連の高Ca血症が固形癌進行の後期にしばしば生じて、予後不良を示唆する。

-  がん関連高カルシウム血症は、原発副甲状腺機能亢進症などの非悪性腫瘍を原因とすることがあり、これらは適切な臨床評価と血液検査で除外されるべきである。

-  がん関連高カルシウム血症の患者は一般的に、重度の脱水を呈するため、初期治療には点滴加療をすべきである。

-  破骨細胞性骨吸収の亢進は、腫瘍型またはメディエーターに関係なく、ほぼ常に高カルシウム血症の原因である。

-  適切な点滴加療後に骨吸収阻害剤(最も一般的にはビスフォスフォネートの静脈内投与)を使用してカルシウム値を低下させることが、治療の中心である。

-  がん関連の高Ca血症の治療の成否は、結局基礎にあるがん治療に関わる。

 

 

・がん患者の経過の中で30%程度で生じる。

・非小細胞肺癌、乳がん、多発性骨髄腫、頭頸部の扁平上皮癌、泌尿器癌、卵巣癌で生じる事が多い。

・骨転移で予防的にビスホスホネートもしくはデノスマブを使用している患者では、がん関連の高Ca血症の発生頻度は減る。

・がん関連の高Ca血症は予後不良因子で、発生してからの予後の中央値は25~52日という報告がある。

・高Ca血症患者のケースシリーズでは、他の腫瘍型よりも血液がんや乳癌の患者の方が生存率が向上する可能性が高かった。また治療を受けてカルシウムが正常値に戻り化学療法をうけた患者も生存期間が長かった。

・がん関連の高Ca血症は4つに分類される。

 体液性、局所的な骨破壊、1 25-(oh)2ビタミンd、異所性

 

・体液性高Ca血症は、通常、腫瘍からのPTHrPの分泌によって引き起こされる。

・通常、PTHrPは局所的に産生される成長因子であるが、腫瘍による制御不能な全身性分泌は破骨細胞の骨吸収を増加させ、尿細管でのカルシウムの再吸収を促進させる。

・PTHrPは肺もしくは、頭頸部、乳腺、泌尿器系の扁平上皮癌と関係する事が多い。

・体液性のがん関連高Ca血症患者では典型的には、骨転移は少数か無い事が多い。

 

・局所の骨破壊による高Ca血症は多発骨転移があり、乳がん・多発性骨髄腫で生じる事が多い。

・腫瘍関連のサイトカインが破骨細胞による骨吸収を促進し、骨芽細胞による骨吸収を抑制する。

 

・過剰な1,25-(OH)2ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収と骨吸収を促進し、高カルシウム血症を引き起こす。

 

・異所性PTH産生は、副甲状腺腫瘍など希な頻度で生じる腫瘍が原因となる。

 

治療 まとめ

・点滴 生理食塩水 1~2Lをボーラス投与。その後200~500ml/hrで投与。

 Caが1~1.5mg/dl程度最初の24時間で低下する事を期待する。

 100~150ml/hrの尿量を得られる様に調整して、輸液過剰に注意する。

 

・ゾレドロン酸 破骨細胞の活動抑制。

 4mgを生食100ml or 5%TZ100mlに溶解して15分で投与(日本ではパック製剤)

 効果:80~90%の患者で48~72時間以内にCaが正常化する。効果は30~40日継続する。(通常は4週毎に投与する) 効果は急性期からあり、低Ca血症になる事もある。特にビタミンDの低下がある時には生じやすい。GFR<60ml/minで用量調整必要。

 

・デノスマブ 破骨細胞の形成、分化、活性化の抑制。 

 120mgを皮下注射する。

 効果:少なくとも70%の患者でCaが正常化して、中央値で104日間効果が持続する。

 急性期からの効果はビスホスホネートよりは少ない事が多い。顎骨壊死や非特異的な骨折は少ない。他の治療をせず、デノスマブを中止した時にはリバウンドで破骨作用が起こる事もある。

 

・フロセミド ナトリウム利尿を介するカルシウムの尿中排泄。20~40mgをiv投与。

0.5~1mg/dl程度の低下を見込む。補液で十分に循環血漿量が保たれてから投与する。

 

・グルココルチコイド 活性化ビタミンDの濃度を低下させる。60mg/dayを10日間投与する。通常はリンパ腫の患者で使われる。原疾患への治療が開始されない限り効果は一時的になりえる。