地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

Ⅲ期肺癌の過去、現在、未来 その1 

現在Ⅲ期肺癌に関して大きな変革がもたらされてきています。 

周術期での免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の使用、根治化学放射線治療後の免疫チェックポイント阻害薬などが標準的な治療になりつつあります。 

これらの新しい治療方法が出てきてはいますが、今一度まずは、今までのⅢ期肺癌の治療戦略に関して振り返っていこうと思います。 

 

そもそもⅢ期肺癌(規約第8版)といっても大きく分けると、

①切除可能なⅢ期肺癌

②切除不能なⅢ期肺癌 

に分けられます。 

切除可能か不能かを分ける指標は施設によって変わり、外科、内科、放射線治療科の3者で協議する必要があります。通常N3症例(対側縦隔、対側肺門部、鎖骨上窩リンパ節)に関しては、手術適応はなく、CRT(化学放射線治療)もしくは全身化学療法の適応となります。 

N1症例に関しては、基本は手術(+術後化学療法)の方針になりますが、bulky N1 (短径20mm以上)など根治には肺全摘が回避出来ない症例に関しては、CRT適応となる事が多いです。

悩ましいのはN2症例であり、ガイドラインでもⅢA期N2症例に関して、multi station N2(N2領域に複数のリンパ節転移あり)の場合やbulky N2といった手術適応のない症例以外は、N2の評価を気管支鏡検査(EBUS-TBNA)などで組織学的に術前行う事が推奨されています。

ただ、Checkmate816試験の結果を元に以前まででは手術適応のなかったN2ⅢA症例に関して、術前化学療法+ICI → 手術の可能性も提示さえる様になるのではないかと思われます。

同じⅢ期でもSST(肺尖部胸壁浸潤癌)では、術前にCRTを行う事もあり、治療方針は異なります。

 

周術期が今は話題の中心ですが、まずは切除不能3期症例(主にCRT症例)に関して振り返って参りたいと思います。

(続く)