奈良の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

Osimertinib PD後の2次治療に関して

FLAURA試験の結果を元にOsimertinibを1st lineから使用する事は標準的となっています。ただ、問題となるのはOsimertinibがPDとなった後の2nd line以降の治療戦略です。

肺癌診療ガイドラインでは、1st lineでOsimertinib PD後の2nd lineとしては「遺伝子変異/転座陰性、PD-L1 TPS:50%未満、もしくは不明の一次治療」と記載されています。

その中でも年齢とPSで治療方針は異なり、

・PS0~1、75歳未満 ⇒ プラチナ製剤併用±PD-1/PD-L1阻害薬、ペンブロリズマブ単剤(PD-L1≧1%)、ニボルマブ+イピリムマブ併用

 

・PS0~1、75歳以上 ⇒ 細胞障害性抗癌剤単剤、プラチナ製剤併用±PD-1/PD-L1阻害薬、ペンブロリズマブ単剤(PD-L1≧1%)

 

PS2 ⇒ 細胞障害性抗癌剤単剤、プラチナ併用療法 

 

となっています。 

PS0~1、75歳未満に関して

具体的に日本の保険診療で使用可能なレジメンを上記の条件に照らし合わせて列挙すると、、、

(ここでは、EGFR陽性肺癌であり、non-small , non-Sqに絞って記載しています。)

① CBDCA( or CDDP)+PEM+Pembrolizumab  (Keynote189試験)

② CBDCA+PTX+Atezolizumab+bevacizumab      (IMpower150試験)

③ CBDCA+nab-PTX+Atezolizumab                      (IMpower130試験) 

④ CBDCA+PTX+Nivolumab+Ipilimumab             (Checkmate9LA試験)

⑤ Pembrolizumab                 (Keynote042試験)

⑥ Nivolumab+Ipilimumab           (Checkmate227試験)

 

となります。では一体どれを使用すれば良いのでしょうか? 

まず、それぞれの根拠となる臨床試験ではEGFR遺伝子陽性例が含まれていたのかを確認していきます。EGFR陽性が含まれていたのは、②と③のIMpower150と130試験でした。他の試験ではEGFR患者は除外されており、EGFR陽性患者への効果は不明です。

IMpower150試験に関しては、肺癌をされている方には常識かもしれませんが、subgroup解析でEGFR陽性患者に関しても有効な可能性がありました。

n engl j med 378;24 nejm.org June 14, 2018

 

EGFR陽性例ではHR:0.59という事で41%のリスク減少で良い様な気がします。

ただ気をつけないといけない事は、EGFR陽性患者はCBDCA+PTX+Atezo+Bev(ABCP)を受けた全体の8.8%(35/400人)しかいませんでした。35人とコントロール群の45人の比較の上に事前に設定された評価項目では無いsubgroup解析であり、鵜呑みにして、ABCPを積極的に使用する根拠には乏しい様に思われます。 

 

またIMpower130試験はどうであったかというと、まず登録可能な症例はEGFR/ALK変異陽性で、TKI治療に不耐もしくは病勢進行後に登録可能との事でした。化学療法+ICI(CBDCA+nab-PTX+Atezo)群は合計483人でそのうちEGFR or ALK陽性者は32人(7%)でした。患者数が少ないもののEGFR・ALK陽性患者に限ればHR:0.98で1をまたぎ、優位な効果は得られませんでした。

ちなみに主要評価項目は、遺伝子変異陽性患者を除いたwild typeのITT集団におけるPFS、OSでした。

PFS中央値:7.0ヶ月(vs 5.5ヶ月)HR:0.64 

OS中央値:18.6ヶ月 (vs 13.9ヶ月)HR:0.79 

 

EGFR陽性かつPD-L1≧50%で、TKI未治療患者にPembrolizumabを投与した研究(J Thorac Oncol. 2018 August ; 13(8): 1138–1145. )がありますが、有効性は示されず、EGFR陽性・PD-L1:高発現患者への1st line のICI使用をすべきでは無いという結論でした。

なので、EGFR陽性者に関してPD-L1が高発現であってもKeynote024試験に準じたPembrolizumab単剤は避けた方が良いと思われます。

(抗PD-1単剤療法は、喫煙歴のない人が多いこと、TMBが低いこと、腫瘍T細胞の浸潤が少ないことなどが原因で、臨床効果が低いことが分かっているそうです) 

 

ではNivolumab+Ipilimumabはどうでしょうか。こに組み合わせに関してもEGFR陽性患者では良い結果は得られていません。 

EGFR陽性で、1st line でTKIがPDになったNSCLC患者を対象にNIvolumab vs Nivolumab+Ipilimumabを比較した第2相試験があります。(Lancet
. 2019 May 4;393(10183):1819-1830. doi: 10.1016/S0140-6736(18)32409-7. Epub 2019 Apr 4.)

この試験は無益性のため早期中止になりましたが、合計31人の患者が参加し、16人がNivo+ipi、15人がNivoに割り付けられ、それぞれPFS中央値が1.22ヶ月 vs 1.31ヶ月 p=0.96とPFSも短く、Ipilimumabの上乗せ効果もありませんでした。

 

結局のところ、現時点ではPS~1、75歳未満のOsimertinib PD後の2次治療に関して強固なエビデンスのある治療はないとしか言いようがありませんが、少なくともプラチナ併用の化学療法にICIを加える治療が望ましいのではないかと思われます。

 

使い分けとしては、色々な考えがあるとは思いますが、大きく分けると、、

・PEMが使用可能か

・bevacizumabが使用可能か、もしくはbevacizumabの上乗せに期待出来るか

になるのではないでしょうか。 

 

PEMに関しては間質性肺炎Ccr:45ml/min未満の腎機能障害がある症例に関しては使用する事は難しいです。 

腎機能障害がある症例に関しては、CBDCA+nab-PTX+Atezolizumabを使う事が多いかと思います。実際現在、腎機能低下進行非扁平上皮非小細胞肺癌を対象としたCBDCA+nab-PTX+Atezolizumabの有効性を検討する第2相試験が進行中です。(LOGIC2002試験)

 

間質性肺炎を有する患者では通常TKIを使用しないので、通常は現在の議論には関係ないことかと思われます。

ちなみにいうと、間質性肺炎合併の切除不能NSCLCに関して、間質性肺炎がUIP patternではなく、%VC≧80%を満たす症例(18例)に関してNivolumabの安全性と有効性を検討した試験があり奏効割合 39%,PFS中央値 7.4 ヵ月、OS中央値 15.6 ヵ 月(Lung Cancer. 2017;111:1-5.) と有望な結果がえられています。

間質性肺炎合併肺癌であれば、すべてICI禁忌ではなくなってきています。

 

bevacizumabに関しては、以前から胸水症例に関しては胸水コントロールが得られやすい事は報告されています。

さらにIMpower130試験、IMpower150試験の結果を基にすると肝転移症例に関してはBevacizumabの上乗せ効果がありそうです。