奈良の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

肺癌とPolypharmacyの関係

polypharmacyは老年医学では重要な問題として位置づけられています。5種類以上の内服をポリファーマシーと定義した時に高齢者の脆弱性や認知機能低下、転倒、薬剤有害事象が増えると言われています。(Journal of Clinical Epidemiology 65 (2012) 989e995)

またポリファーマシーは併存疾患や身体的な負担をある程度反映しているはずと言われています。 

肺癌の予後を予測する指標としてもっとも重要なものはPS(パフォーマンスステータス)ですが、Polyphramacyも肺癌の予後予測因子となり得るのではないかという報告が日本から出ていますので紹介します。

Journal of Cancer Research and Clinical Oncology (2020) 146:2659–2668

 

目的
ポリファーマシーは高齢者では頻度の高い問題である。しかしながら、高齢の進行癌患者におけるポリファーマシーの頻度や生存率、有害事象など抗がん剤治療の臨床経過に与える影響については、よくわかっていない。
方法 
我々は2016年~2019年の間でICIの治療を受けた日本人の進行もしくは再発非小細胞肺癌患者を後方視的に検討した。 
結果
157人の65歳以上の患者の中で5剤以上をポリファーマシーの定義とした時に、その頻度は59.9%(94/157)であった。高齢者への処方のスクリーニングツールであるSTOPP criteriaによると、潜在的不適切処方は38.2%(60/157)であった。PFSの中央値はポリファーマシーがある群と無い群でそれぞれ3.7カ月と5.5カ月であった。(P=0.0017)。全生存期間(OS)中央値はそれぞれ9.5カ月と28.1カ月であった(P<0.001)。多変量解析によりポリファーマシーとOSとの関連は認められたが、ポリファーマシーとPFSとの間には有意な関連は認められなかった。ポリファーマシーは、免疫関連の有害事象とは関連がなかったが、ICI治療中の予期せぬ入院の割合が高いことと関連があった。(59.6% vs. 31.7%、P<0.001)。
結論
ポリファーマシーは高齢でICI治療した進行非小細胞肺癌の独立した予後不良因子であった。またポリファーマシーは患者の併存疾患や症候の簡単な指標もしくはICI治療中の予期しない入院の簡単な指標として利用出来るかもしれない。

 

個人的な感想。 

Polypharamacyと肺癌の関係を論じた報告は少なく意義のある研究と思われます。

今後はPolypharmacyへの介入(STOPP criteriaなど)を行う事で予後の改善が期待出来ればおもしろいかなと思ったりします。 

irAE(免疫関連有害事象)とPolypharmacyは関係性が乏しかったのも面白い結果だなあと思いました。

この研究ではEGFR陽性患者も含まれていて、EGFR陽性かどうかは大きく予後の影響するので、EGFR陽性か陰性かで評価しても良いのではないかなあと思っていたら、同じ筆頭著者から、EGFR陽性肺癌患者に対してのPolypharmacyも検討されていて、Polypharmacyと肺癌への情熱を感じました。

以下EGFR陽性例の肺癌患者とPolypharmacyの論文です。 

「Polypharmacy among older advanced lung cancer patients taking EGFR
tyrosine kinase inhibitors」 

Journal of Geriatric Oncology 12 (2021) 64–71

EGFR陽性例でも同様にPolypharmacy群ではOSが優位に短いという結果との事でした。