地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

Covid19感染後のrebound現象

最近では少なくなりましたが、第4波の頃はCovid19への標準的な治療後に再増悪するケースが散見されました。

この事象を表す共通した医学用語は定かではありませんが、聖路加病院からの報告があり紹介させて頂きます。

 

Steroid resistance and rebound phenomena in patients with COVID-19

Respiratory investigation 59 (2021) 608-613.

 

2020年6月1日から2021年1月17日までに聖路加に入院したCovid19患者のうちステロイド治療をされた18歳以上の患者の後方視的研究。間質性肺炎HIV感染症ステロイドの入院前からの使用、転院して追跡出来ない患者、Covid19既往は除外した113人が対象です。

治療成功群、再増悪群、難治性群に分けて検討しています。

どの様に上記3群を定義しているかで、以下の seven-point ordinal scaleを使用しています。

1 死亡

2 気管挿管での人工呼吸もしくはECMO使用

3 NPPVもしくはネーザルハイフロー使用

4 酸素投与を必要とする 

5 酸素を必要としないが医療的な処置を要する(入院)

6 酸素も必要とせず医療的な処置も要しない(入院)

7 入院を必要としない

 

治療成功群は、初期のステロイド治療に反応して、再増悪無く退院した症例 

 

再増悪群は以下として定義

1、初期のステロイド治療に反応

2、ステロイドの減量もしくは終了1週間以内に、seven-point ordinal scaleが少なくとも1点以上の悪化

3、後方視的な検討で感染症が除外されている

 

難治性群は初期のステロイド治療に反応せず、seven-point ordinal scaleで少なくとも1点以上の悪化している症例と定義されていました。

 

113人の中で、

83人(73.5%)が治療成功群

9人(8%)が再増悪群

21人(18.6%)が難治性群

でした。 

 

治療成功群では、症状発現からステロイド開始までの中央値が7日間で、終了が15日間であったとの事でしたが、再増悪群では症状発現からステロイド開始までの中央値が5日間であり、再増悪群の方がステロイド開始までの期間が短かったとの事です。 

 

再増悪までの中央値が12日で、ステロイド終了後から20日立っての再増悪は無かったとの事でした。

 

自経例でも、ステロイド終了後から3~5日程度で再増悪するケースが多く、肺炎が広範囲に及んでいた症例が多かった気もします。

上記の報告では、治療に関して治療成功群ではトシリズマブの使用率が2.4%で難治性群では9.5%であったのに対して、再増悪群では0%でした。

自経例でもJAK阻害薬もしくはトシリズマブを使用していた症例では再増悪のケースは無く、JAK阻害薬やトシリズマブの不使用も再増悪のリスクかもしれません。

 

 

第4波ではこういった症例は散見されましたが、5波では少なくなっています。これもワクチン接種率の向上や治療選択肢の増加も要因としてあるかもしれないと思っています。