地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

KISEKI試験(WJOG12819L)

Lung Cancer 177 (2023) 44–50

 

A phase II study (WJOG12819L) to assess the efficacy of osimertinib in 
patients with EGFR mutation-positive NSCLC in whom systemic disease 
(T790M-negative) progressed after treatment with first- or 
second-generation EGFR TKIs and platinum-based chemotherapy

Masayuki Takeda et al. 

 

EGFR-TKI既治療、EGFR:T790M陰性に対するオシメルチニブの有効性を検証した第2相試験の結果です。患者家族会発案、医師主導治験というとても珍しい形の試験と思います。

EGFR:T790Mの陽性率は40~55%(肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き第4.2版)でRELAY試験の結果でも、治療進行後のエルロチニブ耐性によるEGFR:T790M発現率はRAM+ERL群47%、ERL群50%との事でした。

実臨床では1次治療に第一もしくは第二世代のTKIで治療し、増悪後に再生検してT790Mを確認して、オシメルチニブを投与出来る患者は3割程度と言われています。

現実的には1次治療に第一もしくは第二世代のTKIで治療した患者では、2次治療にオシメルチニブを使用出来ない患者もいるので、今回の結果を元にしてオシメルチニブの適応拡大に繋がれば良いのかもしれませんが、どうなるのでしょうか。

もし適応拡大になれば、RELAYレジメンの使用は増えるのではと考えています。

 

 

背景 :オシメルチニブは、第3世代の上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤で、化学療法未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんに対する標準治療として確立されている。 しかし、そのような前治療歴のある患者さんのうち 、第一世代または第二世代のEGFR TKIを使用した場合、オシメルチニブ治療の対象となるのが約半数となるのは、T790M陽性の転移性NSCLCに限り、2次治療以降の適応となっているからである。
本試験は、日本の肺癌患者ネットワークの要請により開始された。
方法:第1世代または第2世代のEGFR TKIとプラチナベースの化学療法による治療後(T790M陰性)に進行したEGFR変異陽性NSCLC患者を対象に、オシメルチニブの有効性を評価する第2相試験を実施した。主要評価項目は、奏効率である。

結果:2020年8月~2021年2月までに15の施設から55人の患者が参加した。初回の解析時点で主要評価項目である全奏功は、16人の患者で達成し、(29.1 %; 95 % CI, 17.6–42.9) 解析に必要な奏効率の閾値を上回った。

SDは16人(29.1%)、PDは18人(32.7%)。無増悪生存期間(PFS)の中央値は4.07ヶ月(95%信頼区間2.10-4.30)で、12ヶ月PFSの割合は17.3%であった。

結論:オシメルチニブは、進行性のEGFR T790M陰性例に対して中等度の抗腫瘍活性を示した。