奈良の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

肺癌腔内照射

腔内照射と言えば、前立腺癌への小線源療法を思い浮かべる方が多いかもしれません。肺癌でも実は腔内照射は行われてはいます。

1922年に最初の肺癌への腔内照射の報告があります。現在はイリジウムが主流ですが、その当時はラドンを用いて硬性気管支鏡で行われていたみたいです。

Yankauer S. Two cases of lung tumour treated
 bronchoscopically. N Y Med J 1992 ; 21 : 741-2. 

 

腔内照射の手順をお示しします、下記図も参照ください。

① 経鼻的に気管支鏡を病変部まで挿入する。 

② ガイドワイヤー(6fr 150mm)を鉗子口から挿入して、透視で腫瘍遠位部まで誘導出来ている事を確認する。 

③ ガイドワイヤーが腫瘍遠位部にある事を透視で確認しながら、気管支鏡を抜去していく。(ガイドワイヤーは留置した状態) 

④ 気管支鏡を抜去

⑤ ガイドワイヤーを通して専用のアプリケーターを挿入していく。

⑥ アプリケーターは近位部と遠位部にウイングがあり、腫瘍をウイングで挟む様に留置する。 

⑦ マウスピースから経口的に気管支鏡を挿入して、腫瘍とアプリケーターの位置を確認する。腫瘍がアプリケーターに接して、ウイング内に挟まれている事を確認し、ウイングを広げて固定する。アプリケーターに引っかからない様に気管支鏡を抜去する。

⑧ 線源移送用チューブをアプリケーター内に挿入する。

⑨ 線量分布を計画し照射する。 

 


日本胸部臨床71巻4号2012年4月p323-331.

マンパワーも準備も必要であり、どこの施設でも出来る手技ではないです。

 

欧米では、気管内狭窄などで姑息的に照射する事が一般的ですが、日本から早期の気管内腫瘍に対して根治的に照射した報告が散見されます。 

・高齢

・重複癌

・肺癌術後

・低肺機能 

などの事情で手術不能の早期肺癌に対して行われる事が多く、通常は体外照射と腔内照射を併用して治療される事が多いみたいです。

 

日本からの報告で40Gy/20frの体外照射に加えて、25Gy/5frの腔内照射で気管原発の早期肺癌を治療した39例の報告があり、観察期間中央値24.5ヶ月で2例のみ再発があり、放射線肺炎は2例のみで重篤な有害事象もなかったとの事です。

Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1996 Mar 15;34(5):1029-35.

 

同じく日本からの報告で64例の腔内照射を施行した肺癌患者の長期フォローアップデータが出されています。(Jpn J Clin Oncol 2008;38(9)581– 588) 

1987年から2003年までに南東北陽子センターで腔内照射された64人の患者が対象です。患者背景は以下の通りです。

 

特徴としては、ほぼ男性の患者で、組織型はすべて扁平上皮癌との事です。

病変の場所は主気管支、葉気管支、区域枝が多く、比較的太い気管に発生した早期の肺扁平上皮癌が対象となる事が多い様です。

腔内照射を選択した理由として、低肺機能もしくは低心機能や多重癌、高齢、手術拒否がありました。

体外照射0~70Gy(中央値:46Gy)+腔内照射10~60Gy(中央値29.3Gy)を併用。

 

腔内照射終了後1ヶ月で効果判定して、腫瘍が消失+細胞診陰性の場合をCR、腫瘍が縮小しているが、細胞診陽性の場合をPRとしたとの事です。 

 

患者は3ヶ月毎に気管支鏡を行い、6ヶ月毎に胸部レントゲン、CTや肝エコー、骨シンチを毎年行い経過観察したとの事です。 

 

結果:治療効果は63例でCR、1例でPR。CRを示した63例中7例で局所再発を認めたとの事です。また、5年全生存率は56%(95%CI、43-69%)、無再発生存率は55%(95%CI、43-68%)でした。

治療関連死は3名あり(4.7%)、2人は肺臓炎、1人は肺出血が原因との事でした。 

 

耐術能が無く、気管~区域枝までの比較的中枢の気道に生じた肺癌(特に扁平上皮癌)であれば、腔内照射は考慮しても良い治療選択肢ですが、どこでも出来る治療ではないので、実際に行えるかどうかは難しいですね。 

 

腔内照射の場合体外照射と併用している事が多く、間質性肺炎などで体外照射が禁忌の症例で腔内照射のみを行った報告は少なく、腔内照射のみの効果は不明である事も注意が必要と思われます。