地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

呼吸器診断学 その2

前回診断学総論といった感じでしたが、今回からは”呼吸器”っぽい事をしていこうと思います。そもそも、この記事を書いていこうと思い立ったのは、呼吸器内科医としてよく相談されるケースに関して事前に答えを用意できる様にしておきたかったという事もあり…

TAPOs (Transient Asymptomatic Pulmonary Opacities)

知らなかった概念であり勉強しました。 Osimertinib最適使用ガイドラインでは間質性肺炎の発症率は6.8%と言われています。 下記に示す論文では間質性肺炎(ILD)の発症率は1~3%とされています。 ただ、ILDではなくTKI治療中に一時的に陰影が生じる現象が…

SMARCA4欠損腫瘍 

SMARCA4 欠損腫瘍(SMARCA4-deficient thoracic sarcoma)をご存じでしょうか。 2015年にLe Loarer らにより初めて報告された(Nat Genet 2015;47:1200-05)比較的新しい疾患概念です。SMARCA4はSWI/SNF複合体のサブユニットの1つであるBRG1蛋白をコードする…

Covid19感染後のrebound現象

最近では少なくなりましたが、第4波の頃はCovid19への標準的な治療後に再増悪するケースが散見されました。 この事象を表す共通した医学用語は定かではありませんが、聖路加病院からの報告があり紹介させて頂きます。 Steroid resistance and rebound phenom…

左腋窩リンパ節腫脹の原因は、、、

知っている人は知っているのでしょうか? この前経験した症例を振り返りさせて頂きます。 個人情報はぼかして、説明します。 高齢女性で肺に基礎疾患があり、1年に1回胸部CTを撮影している患者です。何十年前に左乳癌で手術加療された既往があります。 1年振…

Long covid-19 (Covid19の後遺症)に関して

NHKのニュースでも取り上げられていましたが、コロナ後遺症に関してあまり知識が無く、読んでみました。 https://doi.org/10.1038/s41591-021-01433-3 ニュージャージー州バーゲン(Bergen) の312人コロナ患者(入院:65人、自宅隔離:247人)を6ヶ月症状を…

睡眠時無呼吸診断の参考所見

JAMA. 2013;310(7):731-741. doi:10.1001/jama.2013.276185 上記論文からの抜粋です。 無呼吸の目撃も特異度は高くないのですね。 以外と特異度が高いのが起床時の頭痛との事です。これは睡眠時無呼吸に伴う夜間のCO2貯留を反映した症状と言われています。 …

睡眠時無呼吸症候群の身体所見

以外とガイドラインにも記載が無いし、体系的に学ぶ機会が少ない事かと思われます。 ・Cricomental Space (JAMA August 21, 2013 Volume 310, Number 7より引用) 上記の様に下顎と輪状軟骨を結んだ線をCricomental Spaceと言います。この長さが1.5cm以上…

EGFR陽性、PD-L1高発現NSCLCへの抗PD-1/抗PD-L1阻害薬に関して

以前からEGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に関して、抗PD-L1阻害薬の効果が乏しい事は言われています。ただKeynote024試験に端を発し、PD-L1≧50%などの高発現群では抗PD-1阻害薬が有効である事は、肺癌領域では、もはや常識になりつつあります。(もちろんPD-L1…

呼吸器診断学

論文紹介も良いのですが、中々続かないので自分の興味がある事を紹介して参りたいと思います。 ”呼吸器診断学” に関して自分が考える事を紹介して参ります。 診断のオプション ・仮説演繹法 ・Semantic Qualifier (SQ) ・illness script (疾患の典型例) ・…

間質性肺炎急性増悪の呼吸管理

かねてから間質性肺炎急性増悪の呼吸管理に関しては、ネーザルハイフローが良いのではないかと考えていました。 NPPVであれば、長期間の装用に耐えられないし、IPPVでも同様ですが、高いPEEPや肺胞にかかる圧により人工呼吸関連の肺障害を起こすのでは無いか…

メトホルミンによる抗悪性腫瘍効果

doi.org/10.1016/j.lungcan.2020.11.011 Lung cancer 151(2021)8-15 メトホルミンによる抗悪性腫瘍効果が期待されている事は過去にも報告はありました。(doi.org/10.2337/dc08-2175) 糖尿病を持つ肺癌の患者にメトホルミンを投与する方法でしたが、今回は…

睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療

睡眠時無呼吸症候群へのCPAP治療は高いエビデンスがあり効果が実証されています。 35個のRCTをまとめたmeta-analysisではコントロール群に比べてAHIの優位な減少(-33.8 events/hr) があり、ESSを用いた評価で日中の眠気が改善し、血圧低下、QOL改善が示され…

睡眠時無呼吸症候群の診療フローチャート

睡眠時無呼吸症候群診療ガイドライン2020を元に作成しました。 ポイントは ・無呼吸を疑う患者では精査を進めながらも生活習慣の是正を行う。 ・(記載はしていませんが)問診票だけで除外はせず、診療所でも可能な簡易検査を行う。 ・簡易検査でAHI≧40なら…

睡眠時無呼吸症候群の治療(行動療法)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療に関して概説します。 行動療法 ・減量 肥満がある患者に関しては減量が望ましいです。後述するCPAP療法だけよりもCPAPと減量を組み合わせる事でより血圧降下作用やインスリン抵抗性が改善したRCTがあります。(N Eng L…

睡眠時無呼吸症候群の診断/治療がなぜ重要か。

そもそも睡眠時無呼吸症候群を診断して、治療する意義はどこにあるのでしょうか。 大きく分けると3つの意義があると思われます。 ① QOLの改善 ② 併存疾患の管理/リスク低減 ③ 交通事故のリスク低減 ① QOLの改善 眠気、QOLの低下がある中~重症の閉塞性睡眠時…

obstructive sleep apnea in adults (N Engj Med 2019;380:1442-9)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群のNEJMに掲載されていた総説です。 抜粋しての意訳です。 途中で息切れしたので出来た範囲で、、、 key clinical points ・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は頻度が高く、交通事故や心血管疾患の独立したrisk factorである。 ・家…