地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

メトホルミンによる抗悪性腫瘍効果

doi.org/10.1016/j.lungcan.2020.11.011

Lung cancer 151(2021)8-15 

 

メトホルミンによる抗悪性腫瘍効果が期待されている事は過去にも報告はありました。(doi.org/10.2337/dc08-2175

糖尿病を持つ肺癌の患者にメトホルミンを投与する方法でしたが、今回は糖尿病に関係無くメトホルミンを抗癌剤と併用する試験みたいです。(baselieneでDMがあるのはメトホルミン群で27.8%、コントロール群で16.9%)

基本的には生存率に差が無い様ですが、PETで集積の強い肺扁平上皮癌ではメトホルミン上乗せの効果があるかもとの事です。

安全性としては倦怠感や食思不振などの有害事象はあったものの2群で大きな差は無く、低血糖や乳酸アシドーシスも無かったとの事です。

さすがにDMの有る無しに関係無くメトホルミンを入れるのは乱暴かもしれませんが、DMがあれば積極的にメトホルミンを考慮してもいいかも知れません。

 

でも選択されている化学療法がCBDCA+GEMみたいですが、今の時代に1st lineがこれは無いけどなあと、、、

 

 

目的:

過去のエビデンスからは、抗糖尿病薬であるメトホルミンが、癌代謝をコントロールする事で抗腫瘍効果を持つ事が示唆されてきた。化学療法にメトホルミンを加える事で肺癌患者の生存率改善に寄与するかを評価した。

 

方法:

このランダム化第二相試験は、化学療法を受けた事が無く、EGFR、ALK陰性のstageⅢb/Ⅳの非小細胞肺癌患者164人が登録された。患者は化学療法にメトホルミン(1000mgを1日2回)加える、もしくは化学療法単独を3週毎に6コース投与した。

患者はゲムシタビン(1000mg/m2)をday1、8にカルボプラチン(AUC5)をday1に投与された。探索的研究が含まれ、血清代謝パネル、PET、代謝関連遺伝子の遺伝子変異とした。

 

結果: 

メトホルミン群はコントロール群に比べて、進行と死亡のリスクに優位差を示さなかった。 (progression: hazard ratio [HR] = 1.01 [95% confidence interval (CI) = 0.72 − 1.42], P = 0.935;death: HR = 0.95 [95% CI = 0.67–1.34], P = 0.757) 

扁平上皮癌はbase lineのPETで非扁平上皮癌に比べてPETのFDG集積が優位に高かった。

(p=0.004) 

扁平上皮癌でFDGの取り込みが高い場合、メトホルミンの追加により、進行と死亡のリスクが大幅に減少した。 (progression: HR = 0.31 [95% CI = 0.12− 0.78], P = 0.013; death: HR = 0.42 [95% CI = 0.18–0.94], P = 0.035).

HDLコレステロールレベルは、コントロール群と比較してメトホルミン群では治療後に有意に増加した。(P = 0.011)

インスリン血症や治療後にインスリンレベルが減少した患者に関しても延命効果をもたらさなかった。 

結論:化学療法へのメトホルミンの追加は非小細胞肺癌の患者への延命効果をもたらさなかった。しかしながら、FDG取り込みが高い扁平上皮癌に関しては優位に生命予後が延長した。これは、糖代謝に高く依存する腫瘍にメトホルミンが相乗的に抗腫瘍効果をもたらす事が示唆された。 

 

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