睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療
睡眠時無呼吸症候群へのCPAP治療は高いエビデンスがあり効果が実証されています。
35個のRCTをまとめたmeta-analysisではコントロール群に比べてAHIの優位な減少(-33.8 events/hr) があり、ESSを用いた評価で日中の眠気が改善し、血圧低下、QOL改善が示されました。ただ死亡率の減少までは証明はされませんでした。(JAMA. 2017;317(4):415. )
2019年のAmerican Academy of Sleep Medicineのmeta-analysisでは、CPAPは治療しない事に比べて、AHIを減らし(中央値-23/hr 95%信頼区画 -18 ~ -29 events/hr ) 眠気を改善し、血圧を減らし (収縮期血圧 -4.2 mmHg; 95% CI -6.0 to -2.5 mmHg 、拡張期血圧 -2.3 mmHg; 95% CI -3.7 to -0.9) 、交通事故を減らし(HR:0.30)、QOLを改善させる。ただし、死亡率、心血管疾患、気分障害、空腹時血糖、HbA1c、左心機能、入院率には優位差は無かったとしています。 doi: 10.5664/jcsm.7638.
血圧降下作用はありますが、4mmHg程度しか下がりません。
ただ、別の研究にはなりますが、CPAPに加えて減量を指示する事でCPAP単独よりも血圧を下げた報告があります。DOI: 10.1056/NEJMoa1306187
ですので繰り返しになりますが、CPAPだけで無く減量も指示する必要があります。
OSASは、間欠的な低酸素、炎症性メディエーター増加に伴う代謝障害、奇異性呼吸に伴う胸腔内圧低下など複合的な要素があると言われています。
低酸素に対して酸素補給をするだけでは、十分ではなく、夜間の酸素補充とCPAPを比較した試験もあります。心血管疾患、または複数の心血管因子を有する患者において、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関してはCPAPで優位に血圧低下するものの、酸素補充だけではその様な作用はありませんでした。DOI:10.1056/NEJMoa1306766
日本の保険適応では、
簡易検査でAHI≧40もしくは、精密PSGでAHI≧20でかつ、不眠などの症状を有する場合とされています。
ではいざ、CPAPを導入するとなるとどの様な設定を選択すべきでしょうか。
以前はタイトレーションといって、PSGを行いながら、無呼吸/低呼吸、いびきなどの症状を見ながら適正圧を調整する方法が主流でしたが、現在はauto CPAPといって吸気や呼気に合わせて事前に設定された圧の範囲内で機械が自動調整する方法が一般的となりつつあります。マニュアルでのタイトレーションによる方法とauto CPAPではアドヒアランスに差はないと言われています。
ですので、aute CPAPで導入し、圧は4~10cmH2O程度から始める事が一般的です。
CPAP使用患者はアドヒアランス維持が出来ず、drop outする患者も多いです。どの程度の使用でアドヒアランスが保てているかというと、
・4時間以上の使用が
・70%以上 とされています。
複数の報告をまとめるとその遵守率が30~60%という報告もあります。
Adherence to Continuous Positive Airway Pressure
マスク
基本は鼻マスクを使用する事が多いです。
他のマスクとしては鼻・口マスク、鼻孔に入れるピロー型があります。
口呼吸が多く、リークが多い時には鼻・口マスクも考慮しますが、
鼻マスク、鼻・口マスク、ピロー型の3つで比べた試験(Chest 153:665-674,2018 )では、鼻・口マスクでは使用時間が短く、CPAP使用時の残存AHIが高いとの報告があります。
マスク変更以外の方法としては、鼻マスクに加えてチンストラップという、口を開けにくくする補助具を使用する事もあります。
もし、CPAPのアドヒアランスを保てない場合には、患者と相談の上、口腔内装置(マウスピース)への変更を考慮します。
口腔内装置は本来軽症~中等症に使用するOSASの治療になります。
AHIを減少させる作用は、複数報告があり、AHIが38±22 からAHI 14±13.2に減量した報告もあります。
保険診療で作成可能です。作成に当たっては歯科に紹介する必要がありますが、出来る歯科医院もしくは口腔外科は限られており、普段から紹介可能な歯科医院を選定しておく必要があると思われます。
3割診療で約1万5千円程度かかります。