睡眠時無呼吸症候群の身体所見
以外とガイドラインにも記載が無いし、体系的に学ぶ機会が少ない事かと思われます。
・Cricomental Space
(JAMA August 21, 2013 Volume 310, Number 7より引用)
上記の様に下顎と輪状軟骨を結んだ線をCricomental Spaceと言います。この長さが1.5cm以上であるとOSASの可能性は下がります。
Cricomental Spaceが1.5cmより大きければAHI10以上のSDB(睡眠関連呼吸障害)は、100%除外出来るという報告すらあります。
(Am J Respir Crit Care Med Vol 167. pp 1427–1432, 2003)
・Pharyngeal grading
(榊原博樹先生 睡眠時無呼吸症候群診療ハンドブックp160から抜粋)
咽頭所見のGradeです。
日本人男性での研究で、AHI10以上のSDBに対してOdds比は2.92との事です。
上記2つのCricomental SpaceとPharyngeal grading組み合わせた表もあります。
Cricomental Spaceが1.5cm以上であればOSASを否定して良いとなっています。ただCSASなどOSAS以外のSASの可能性があり、眠気など症状があればPSGに進みなさいとなっています。
Cricomental Spaceが1.5cm以内であれば、Pharyngeal gradingに進みます。Pharyngeal grade 3以上であれば、特異度100%でOSASありとしています。PSGすら挟む余地すら与えていません。すごい自信ですね。自分なら一端簡易検査だけでも挟みたいと思っていまいます。
Pharyngeal grade 2以下であればグレーゾーンでありPSGに進むべきとしています。
JAMA August 21, 2013 Volume 310, Number 7では、狭い咽頭所見はAHI10以上とした時のOSASへの感度は58%、特異度67%、LR+:1.4とそこまで特異性の高い所見とはなっていません。
なのでPharyngeal gradeだけで流石にPSGをすっ飛ばすのはどうかと思います。
とういうか、日本の保険診療上簡易検査でのAHI40以上または、PSGでのAHI20以上が必要ですしね。
・マランパチ分類
全身麻酔前の挿管困難を予測するための指標です。
クラス1:口蓋弓、軟口蓋、口蓋垂ともによく見える
クラス2:口蓋弓、軟口蓋は見えるが、口蓋垂の先端は見えない
クラス3:口蓋垂の基部と軟口蓋しか見えない
クラス4:軟口蓋は見えず、硬口蓋しか見えず
とされています。
SDB(睡眠呼吸障害)、OSASにはクラス3/4が多く日本人データでAHI10以上のOdds比は4.14とされています。
そこまで有用な印象は無かったのですが、スクリーニング的に確かめる分には良いかもしれません。
・下顎の後退
下顎後退は、側面で下顎前端と額上顎前端の最後方点を結んだ線より後方に位置される事から診断されます。
個人的にはバナ●マンの日●さんみたいな顔を言っています。
ただあまり診断精度は高くは無い様です。日本人では比較言われて的下顎後退が多いといわれています。下顎の解剖学的構造は人種差がありそうです。
・肥満
OSA最大の危険因子が肥満です。10%の体重増加は中等症OSASを発症するリスクが6倍と言われています。(JAMA 2000;284:3015-3021)
日本人の男性を対象とした研究で、BMI>25.9以上の対象者では50%以上がRDI(呼吸障害指数)>15以上であったとする報告もあります。
NEJMのOSASの総説でもBMI≧30以上や首周りが男性の場合43.2cm以上、女性の場合38.1cm以上は強くOSASを疑う所見とされています。
簡単ではありますが、OSASの身体所見でした。ご参考になれば幸いです。