地方の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

EGFR陽性、PD-L1高発現NSCLCへの抗PD-1/抗PD-L1阻害薬に関して

以前からEGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に関して、抗PD-L1阻害薬の効果が乏しい事は言われています。ただKeynote024試験に端を発し、PD-L1≧50%などの高発現群では抗PD-1阻害薬が有効である事は、肺癌領域では、もはや常識になりつつあります。(もちろんPD-L1高発現だけでは効果予測には不十分かも知れませんが、、)

現在の流れとしてEGFR遺伝子変異陽性の切除不能肺腺癌の一次治療として、Osimertinibが使用される事が多いと思われます。

 1世代・2世代のTKIで治療開始した場合にはT790Mの発現有無は大事な問題ですが、上記の様にOsimertinibで治療開始した場合はT790Mは関係ありません。

 

ではEGFR陽性で1st line OsimertinibでかつPD-L1高発現のNSCLCに関して最適な二次治療とは如何なものなのでしょうか。

ICIが無かった時代にはドライバー変異陰性の場合の1次治療に準じる事が多く、プラチナダブレットで殺細胞性抗がん剤を使用していたと思います。現在はPD-L1:50%以上であればICI単剤もガイドラインでは推奨されてはいます。

ただ、EGFR陽性であっても、PD-L1:50%以上の高発現ではICI(免疫チェックポイント阻害薬)は有効でしょうか。

 

まず、PD-L1:高発現ではプラチナダブレットに比べてPembrolizumab単剤での有効性が示されたKyenote024試験ではEGFRやALK陽性は除外されていました。EGFR陽性かつPD-L1≧50%で、TKI未治療患者にPembrolizumabを投与して研究(J Thorac Oncol. 2018 August ; 13(8): 1138–1145. )がありますが、有効性は示されず、EGFR陽性・PD-L1:高発現患者への1st line のICI使用をすべきでは無いという結論でした。

EGFR陽性患者へのICI単剤は使用すべきでは無いでしょう。

 

有名な試験でIMPOWER150試験があります。いわゆる、ABCP(Atezolizumab+Bevacizumab+CBDCA+PTX)のレジメン根拠となっている研究です。

先行するKyenote024や189試験と異なっているのは、EGFR・ALK陽性患者を含み、探索的研究として肝転移患者でのサブグループ解析を用意していた事と思います。

 

EGFR・ALK陽性のサブグループ解析では、コントロール群に比べて、HR:0.54(0.28-1.03)と有効性が示されていました。

 

上記をもって、最近ではEGFR陽性で1次治療タグリッソを使用した場合は、2次治療としてABCPを使用する事が多くなっています。

 

ただ、ABCPはベバシズマブを含むレジメンです。扁平上皮癌や気管浸潤、血痰の既往があるなどベバシズマブを使用出来ない症例は少なからずあります。ベバシズマブが使用できない様な時はどの様にするべきでしょうか。

 

一つの選択肢はIMPOWER130レジメンを使用する事です。IMPOWER130試験は非小細胞肺癌に対して化学療法とICI(Atezolizumab)の併用を検証した第3層試験です。ここで使用されているレジメンはCBDCA+nab-PTX+AtezolizumabでEGFR陽性患者も除外はされてはいませんでした。全体ではPFS、OSともに化学療法単独に比べて優位な延長が得られました。(12か月時点でのPFS:ICI+ケモ群:29.1%、コントロール群:14.1%、HR:0.64、12か月時点でのOS:ICI+ケモ群:63.1%、コントロール群:55.5%、HR:0.79) 

ただ、EGFR・ALK陽性患者に限ればHR:0.98で1をまたぎ、優位な効果は得られてはいませんでした。

悩ましい所ではありますが、Kyenote189ではEGFR陽性が除外されているのでエビデンスが無いので、まだIMPOWER130レジメンの方がましかもしれません。

 

ですので結論としては、

EGFR陽性で1st line OsimertinibでPDとなった時の2nd lineの候補としては、、

 

・CBDCA+PTX+Atezolizumab+Beva 

 

beva 不適の場合は 

・CBDCA+nab-PTX+Atezolizumab 

・CBDCA(or CDDP)+PEM+Pembrolizumabになるかと思います。

 

もちろん、IPがあるとか自己免疫性疾患があるなどICIが使用できないときには化学療法単独となると思います。

 

また問題となる事はTKIのre-challengeの可能性です。

基本的にはICIを使用した直後にTKIを使用する事は間質性肺炎のリスクになるので避けられるべきです。

ただ、ICI使用後、TKIが使用できないかというとそういう訳ではなく、ICI使用後6か月すれば基本的にTKIを安全に使用可能と言われています。

 

ですのでICIを使用するにしても、PSが比較的保たれているearly phaseの方が望ましいのではないかと思います。

 

上記2nd lineの候補のレジメンでPDとなった時に、3rd lineの候補として、、

PEM 未使用であれば、PEMを使用する。

Beva使用可能症例はDTX+RAMなどを考慮して、最終ICI投与からの時間を稼ぎ、PSが低下したら、TKIのre-challengeが良いのかと思っています。

 

自験例で、EGFR(Ex21L858R)陽性かつPD-L1:65%の高発現の患者に1st line Osimertinib投与 したものの4ヶ月でPDとなった症例を経験しました。FLAURA試験でのOsimertinibのPFSが18ヶ月であったのと比べると明らかに短い期間でした。

2nd line でABCPを選択しましたが、奏功しています。