奈良の呼吸器内科医ブログ

呼吸器内科です。今は肺癌に関わる記事を中心に書いていく予定です。

慢性咳嗽の問診~検査~診断的治療

慢性咳嗽では問診が重要な事に異論は無いと思われる。 

 

問診を行うにもある程度鑑別疾患を想定しておく必要がある。

報告によって違いはあるが、慢性咳嗽の診断において頻度の多い疾患は、

・咳喘息/気管支喘息 

アトピー咳嗽 

・後鼻漏症候群

(もしくは、上気道咳症候群 UACS)

・副鼻腔気管支症候群 (SBS) 

・逆流性性食道炎 (GERD) 

感冒後咳嗽

COPD

・薬剤性 (ACE-I)

が挙げられる。

 

頻度の軸では無く、must rule outすべき疾患としては、

・肺癌

・肺結核

間質性肺炎

が挙げられる。

 

各種ガイドラインで示されているが、上記疾患のrule outのため慢性咳嗽患者には最初に胸部レントゲンでの精査が許容されている。

 Eur Respir J 2020; 55: 1901136

f:id:noboru-_-0913:20220112163042p:plain


個人的には遷延性咳嗽(3~8週の咳嗽)、慢性咳嗽(8週以上)の患者では、まずはオープンに患者の訴えを聞く様にしている。その話の中で

・アレルギー要素あり (喘息 or アトピー咳嗽/喉頭アレルギー)

・後鼻漏要素あり (副鼻腔気管支症候群、慢性副鼻腔炎アレルギー性鼻炎など) 

逆流性食道炎らしさあり

・慢性気管支炎らしさ (気管支拡張症、喫煙関連、非結核性抗酸菌症)

心因性らしさあり

といった大まかな分類を想定して、特異的なクローズクエションに移っていく様にしている。

もちろん薬剤(ACE-I)の内服有無は必ず確認する。

 

慢性咳嗽では特に肺癌、肺結核間質性肺炎は除外したいので。

・喫煙歴

・全身症状 (微熱、寝汗、体重減少) 

・血痰/喀血 

・安静時の呼吸困難有無

嗄声

があるかどうかは注意して確認する。

 

鑑別疾患と特異的な病歴の対応を以下に示す。鑑別疾患を「大きな咳」という意味と常に薬剤は考慮しておくといった意味をこめて、GIAANT C+D という語呂合わせを作ってみた。 

f:id:noboru-_-0913:20220112165258p:plain

上記図の鑑別疾患リストでは「肺癌」、「間質性肺炎」が入っていない。なので、あくまでも胸部レントゲンで大まかな器質的疾患を除外する事が前提になっている。

 

問診票が慢性咳嗽の鑑別に有用かどうかを検討した報告がある。

(Allergology International. 2012;61:123-132)

f:id:noboru-_-0913:20220112165855p:plain

喘息性要素がある慢性咳嗽の患者は非喘息患者に比べて「冷気」、「疲労/ストレス」での咳嗽誘発が多く、逆流性食道炎の患者では「香辛料」、「食事」での咳嗽誘発が多かった。

また、「花粉」、「ペットとの接触」で咳嗽が誘発される患者はatopic factor (IgE上昇、末梢血好酸球上昇)との関連があったとの事であった。 

 

季節性の変動に関しても喘息性の咳嗽との関連があったとの事であった。 

 

慢性咳嗽の診療アルゴリズムの例を示す。

CHEST 2018; 153(1):196-209

 

f:id:noboru-_-0913:20220112171908p:plain

このアルゴリズムでもあるが、個人的にも慢性咳嗽でまず行う検査は、

・胸部レントゲン

・呼吸機能検査

・アレルギー評価(血液検査:VIEW 39-RAST、FeNOなど)

にしている。

 

胸部レントゲンは先述したが、呼吸機能検査も重要な項目である。 

もちろん可能ならばERSのガイドラインで示されていた通りFeNOも測定すべきと思われる。

日本のガイドラインではFeNo:34ppm以上を優位としている事が多い。 

 

呼吸機能検査では見るべき最も重要なところはFV(フローボリュームカーブ)である。

FVカーブの下降脚が下に凸の場合には、末梢気道閉塞を示唆する所見となり、喘息やCOPDを示唆する所見となる。

 

f:id:noboru-_-0913:20220112172833p:plain

もちろん気管支喘息か咳喘息を鑑別するために、1秒率は有用となる。

1秒率:70%以下であれば閉塞性換気障害になり気管支喘息の可能性が高くなる。 

 

ある程度の診断が絞れば経験的治療に移り、治療効果から診断を絞る事も重要にはなる。

 

例えば鑑別に苦慮する疾患として咳喘息とアトピー咳嗽がある。

同じような症状で共にアレルギー素因がある事が多いので症状がover lapする。

実際疾患概念もover lapしており欧米では両者の区別をせず非喘息性好酸球性気管支炎(non-asthmaticeosinophilicbronchitis)としてまとめてしまっている。

 

ただ教科書的には、

気管支喘息 ⇒ 気管支拡張薬が有効

アトピー咳嗽 ⇒ 気管支拡張薬が無効、抗ヒスタミン薬が有効とされている。

 

なので上記疾患2つを想定した時には短時間作用型β2刺激薬を処方し、咳嗽時に頓用で吸入する様に指導して効果を確認する事で両者が鑑別出来る事もある。

最初にICS/LABAを処方したり、ロイコトリエン拮抗薬に加えて抗ヒスタミン薬も処方したりすると、両者ともに有効なためにどちらの要素が強いか推定する事が困難になる事もある。

 

経験的治療の他の例としては、

GERD s/o  ⇒ PPI処方

後鼻漏症候群 s/o  ⇒ 抗ヒスタミン薬、点鼻ステロイド、少量マクロラド処方

がある。